原体験はラビットですね。まだ小学校に上がる前に、叔父さんのラビットというスクーターに乗せてもらったのを覚えている。正確には乗せてもらったというか、ステップボードの上に立たせてくれて、運んでもらうといった感じです。祖父の家は東京の山奥、いまの、あきる野市、旧五日市市なのですが、駅から歩くと四十分くらいかかってしまうんです。だから、そんなかたちで乗せてもらっていたのでしょう。ラビットにはしょっちゅう乗せてもらっていました。
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ラビットという名前を記憶しているほどですから。そのときの顔に風が当たる感覚は、いまでも覚えてますね。夜風の印象が強い。少し湿っていて、少し冷たくて、杉の本の香りでしょうか、芳香につつまれていい勾配の坂を駆け上がる。わくわくしました。まったく怖さはありませんでした。立っていると怖いんじゃないかって気もしますけど、そんな感じはなかったですね。信頼している人に乗せてもらっていたということもあるかもしれません。その叔父さんは都下昭島市の市役所の土木課で働いていて、仕事に便利だということで、たぶんメグロだったと思うのですが、大きなオートバイにも乗っていました。記憶を吟味してみると、その叔父さんのメグロのガソリンタンクの上が、一番最初です。住んでいた都営住宅の近くの米軍基地の引き込み線の踏切まで行って帰ってきたという程度ですが、いま、あのときの昂ぶりをはっきりと思い出しました。ガソリンタンクの上に乗るという変則的な同乗のしかたは、叔父さんにはじめて乗せてもらったときに宿命づけられてしまったようですね。ガソリンタンクですが、黒い塗装に銀のメッキが綺麗だった。それがオートバイ初体験です。