日本社会が住まいに関連する再分配の経験をほとんどもたないとはいえ、その条件の構造変容は住宅システムの転換を促す潜在力をもつ。ここで述べているのは、住宅政策を広い意味での社会政策の一環として位置づけ、再分配の経路を社会化する方針の必要性である。しかし、政府は住宅政策を建設政策の要素として運営し、経済政策に従属させてきた。経済の調子が落ちるたびに住宅金融公庫の融資が拡大し、景気刺激の手段として使われた。
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金融公庫は廃止になった。しかし、景気が低迷するたびに、住宅ローン減税の必要が主張される。住宅建築の「スクラップ・アンド・ビルド」によって景気を刺激するというパターンは依然として残っている。しかし、住宅ストックが増え、空家率が上昇するなかで、住宅建設の大量化政策は、「住宅余剰」を過度にふくらませるだけである。そして、景気刺激のための住宅政策は、強引な持家取得を奨励し、住宅ローンのリスクを増大させる。家賃補助をはじめとする「対人補助」は、社会的な再分配を促す技術である。しかし、住宅政策を建設投資の拡大策として運営する政府は、「対物補助」に傾き、「対人補助」に踏みださない。経済政策に従属する住宅政策は、合理性を欠いているだけでなく、新たな展開の可能性を奪われている。住宅政策を経済次元から自立させ、そのあり方を社会政策の問題として検討し直すことが必要である。